エッセイ No.12
最新宇宙技術の驚異の能力
フランス国立宇宙研究所(CNES)が高度800キロメートルの周回軌道に打上げた地球観測衛星「スポット」は10メートルの解像度を持ち、軍事を含む新たな利用分野の開拓に役立っており、その画像は世界15ケ所の地上局で受信される。
この「スポット」が撮影した画像をもとにインドネシアの小スンダ列島の島の一つのロンブレン島で最高品位の金鉱脈(鉱石一屯当たり金678グラムを含む)が露天掘りの鉱床として発見された。衛星データの画像の処理、評価には別の科学的データを付加し、照合して行なうので、その評価には高い技術力と錬度を要することはいうまでもない。
人工衛星に搭載する各種センサーの開発は日進月歩、いや秒刻みで伸展している。我が国でも先年来、波長440ナノメートル(1ナノは10憶分の1メートル)の緑色の光に反応する放射計が実用段階に入った。この波長は魚の餌となる植物プランクトンの葉緑素が吸収する色なので、この波長の光を検出できるセンサーを衛星に搭載すると、現行のアメリカの資源探査衛星「NOAA」の赤外線カメラがとらえた海水の温度分布データを凌ぐ高い確立で豊かな漁場を探査できると共に、世界中の植物プランクトンの量と分布、即ち、その海の豊かさや潜在的な資源量を正確に見積もることができきる。 それにより、現在の漁業の手法である獲れるだけ獲るという「乱獲漁業」から、将来の計画的に獲る「資源管理型漁業」への転換が可能となる。
このセンサーを搭載した我が国の大型地球観測(多機能実験台)技術衛星「ADEOS」の打上げロケットの失敗は未だ記憶に新しいが、真に残念なことであたった。
世界では、フランスがアメリカと協同開発し、軍事にも利用する海洋探査衛星「トベックス・ポセイドン」も活動している。
打上げロケットは搭載した衛星を所定に軌道まで運んで放出するためのキャリヤー、即ち、運搬手段である。いかに優れた技術を満載した衛星でもこの手段が不安では安定した長期計画など策定できない。さりとてそれを打上げ費用の格安な中国の「長征3A号」(静止軌道に8.5屯を載せる能力を持ち、約50億円の経費で打上げる)やロシアの「プロトンK」(打上げ能力21屯、打上げ経費約110億円)に頼るには技術大国として我が国の国家的面子と誇りからできないことであろう。
我が国の純国産ロケットH2は連続二回打上げに失敗し、それも一回の打上げに約180憶円という莫大な経費を要していた。事後開発されたH2AはH2より若干大きく、打上げ能力は10屯と同じであるが、外国製の部品も使用し、部品の総数を大幅に減じる努力を続け、一回の打上げ費用を約80億円にまで節減できるようになった。2001年8月中旬の打上げを是非成功させたい。ちなみに、安定した打上げを誇る欧州のアリアン4とアリアン5はそれぞれ9.6屯と18屯の打上げ能力を持ち、打上げ経費もそれぞれ約130憶円と190億円程度である。今度失敗したら来年打上げ展開を予定している軍事偵察衛星(情報衛星というそうな)の打上げはどうなるのだろうか。「日本よ、しっかりせよ」と言いたい。