エッセイ・コラム

続 女シリーズ 

 

 「その一」

 ある女子大で女の幸せについて討議したら、「結婚こそ女のしあわせ」との発言に教室がシラケてしまったという。それほど冷静に見つめているということなのか。

 しかしながら地方ではまだまだシンデレラ・シンドロームに罹り、結婚を夢みている純な娘も少なくない。その相手がフィーリングだけが看板のピーターパン症候群に属する青年だったらその結末は早い。お互いに期待することばかりが大き過ぎ、幻想の崩壊が著しい。

 一般論としても、子供が幼稚園にでも行くころまでには、妻は、夢もなく向上心も持ち合わせず、金も無ければ雄々しさもない夫の実像を知るに至り、一億総中流意識とかに駆られて「せめて人並みの生活を」と働きに出る。

 ダメ男よりもシッカリ者の女の方が使えるという当世の風潮のもと、隠れた才能が耀き出し始めると、家事、育児を含めた家庭の管理で女ほど損な立場はないことに改めて気づき、同時に職場でうだつの上がらない分だけ亭主風を吹かせストレスを発散している哀れな夫に愛想をつかし、「ワレナベにトジブタ」を忘れ、突如、離婚宣言に至る。

 大きく変わりつつある女性の意識の改革に目を閉じていた夫は愕然としてうろたえ、取りすがり、あげくの果てにはテレビに出演して「帰ってきてくれー!!」と、置き去られた子どもと共に訴える。

 「腐っても鯛」の諺とおり、器量が良ければ子供を抱えていても、若い初婚の男を見付けることもできる良き時代、かくて、三十代の離婚適齢期は虎視眈々と時期を狙い、「家庭内離婚」からの離脱を試みる。

 羨望の眼でこれを見ている四、五十代の熟女たちは夫の定年の日に切り出す「独立宣言」を楽しみに、ひたすら忍耐の日を送る。 ああ恐ろしき世かな。それにしても情けないのは男どものこと。

 

「そのニ」

 

 百人の女性に尋ねてみた。「あなたは今度生まれ変るとしたら男と女とどちらが良いですか」?と−。対象は二十代から五十代までで、子どもを持っている者に限定。職業の有無は無関係とした(ある生保の調査)

 結果は九十人が女が良いと答え、三人が男になってバリバリ仕事がしたいと言い、残り七人は夫に対する長年の恨みを果たすため男になって仕返しすると言明した。そう答えたのは奇しくも皆五十歳前後であった。だが、このグループの中に、今度こそ己を偽らずに生きて見たいという願望があることも見逃せない。

 このアンケートの結果は極めて興味深いものがある。男の側から見ると、女は男女の差別に苦しみ、女は損な立場だと認識しているとばかり思っていたのに、彼女らは今日の環境下でも女であることに喜びと幸せを感じているということなのだろう。

 これは出産、育児を始め、化粧や衣装による変身等、男にはうかがい知ることのできない多くの喜悦を持っているからなのか。または過酷な男の人生を鋭く観察しているためなのだろうか。

 とまれ、こうなったら、もうこれ以上に女性を優遇することはいらないだろう。今でも女装に身をやつし、あるいは女体変身願望の男が少なくないのに、次世代に女になりたい男が激増でもしたら大変なことになるから。

 

 

「その三」

 三十歳代前半の数人のキャリヤー・ウーマンを良く知っている。化粧品販売、生保やファッションの分野で活躍している。

 その一人は家庭持ちで、身勝手な夫と仕事のはざまで苦しみ、一人は離婚して小さい子供を抱えて頑張っている。そしてもう一人は共働きの同じ条件で、朝夕夫の食事の世話など「とてもじゃない考えられない」という自称「非婚組」だそうな。

 彼女たちが言うには、女が結婚を夢見るのは豪華なウエディング・ドレスに対する憧れと子育てへの関心のためだという。見栄と本能以外のなにものでもない。

 第一次ベビー・ブームに生まれ、ことごとく競争を味わい今や五十代に入った世代の結婚観とは異なり、忍耐ということを知らない。熱が冷めると見きりも早く、見事な割きり方である。新人類の先駆なのである。

 だが、これも善意に考えれば、男の無理解と専横に対する警鐘なのだろう。男も会社が人生のすべてと言う考えからの意識の変革が強く求められていることを知る。

 一流大学から一流会社に入社して、親の見栄と、世間並よりも良い給料との引き換えに己の一生を会社に売ってしまうこれまでの唯一の選択肢を見直し、人生には多くの進むべき道があることが最近見直されてきた。

 会社のため家庭をないがしろにしている男達よ、現実に離婚予備軍が続々と生じていることを知れ。会社という小さな社会の中での出世というはかない希望とのはざ間にたって、うまくやれよとしかいいようがない。

 

 

「その四」

 

 私は花が好きである。目の疲れる仕事をしているので、事務所の中には観葉植物や鉢植えの花を一杯置いている。

 株分けして一鉢に一緒に植えていた君子蘭がふた月を離して続いて咲き始めた。一年に二度も花を咲かせるなんて本当に素晴らしいことで、僕の人生もそれにあやかりたいなあと話していたら、横から、「私なんか四度も五度も花を咲かせていますよ」と、隣県の某生保のナンバーワンのセールス・レデイ。

 年間契約高四十臆円以上、年収二千五百万円とかで、最初の夫には庭付き一戸建ての家を、そして二番目のには最高級の国産車を進呈して離婚して戴き、爾後、子持ち独身と称して三番、四番を経て五番目の歳下の調理人とゴールインし、人生を謳歌しているそうな。業績も益々上がり、その生保の全国ランキングで三位にまで躍進したとの風の便りを聞く。

 スタイル抜群、頭脳明晰、立居振る舞いも清楚なレデイ風。 「今度本社からの抜擢で東京の八重洲口の営業拠点に進出しますので、上京の際は是非お立ち寄り下さいね」 とのことだったが、彼女の男選択の基準が、「つれて歩くにカッコ良く、話して面白く、寝てみて良し」 だそうだから遠慮しよう。

 だが、なにも驚くにはあたらない。昔、男達が同じ台詞を言っていたのだから。男も女も同じ人間として類似の感情、同様な意欲を持っていることを男達は理解しなければならない。

 今や、出来る女たちはあらゆる面で男を越えようとしている。老齢化の到来と青年の無気力で鈍化する国の活力を補うには、このような群像の活躍が不可欠になろう。

 

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