航空機の発達史
世界の航空の流れと日本の航空の状況
日本の航空元年
明治43(1910)年12月19日、東京の代々木練兵場で、日本初の公式飛行が臨時軍用気球研究会所属の日野熊蔵、徳川好敏の両陸軍大尉により行われた。
徳川大尉はアンリ・ファルマン複葉機で飛行時間4分、飛行距離3000メートルを記録し、日野大尉は強風下の状況で飛行時間1分20秒、飛行距離1000めメートルを記録した。
この公式飛行の前日、12月18日、アンリ・ファルマンはアンリ・ファルマンV型機で滞空時間8時間12分の世界記録を樹立している。
明治44(1911)年の資料では、この3年間に誕生した各種にお飛行器械の総数は7827機にもおよび、ブレリオ単葉機の158機、アンリ・ファルマン複葉機135機など、500機強をフランスが占めるまでにフランスは航空大国になっていた。 日本海軍も明治45(1912)年、カーチス水上機を2機購入した。 大正初期から中期にかけて、日本で「モ式」と呼ばれライセンス生産されたファルマン複葉機はアンリの弟のモーリスの設計製作による機体である。
ブレリオXI 単葉機はルイ・ブレリオ自身の操縦で1909年7月25日、英仏海峡横断に成功し、多くの飛行家が興味を示し、量産された航空揺籃期の名機である。明治43(1910)年、世界で初めて時速100qを突破する時速106・508qを記録し、9月23日にはアルプス縦断飛行に成功した。 ブレリオXI 単葉機はフランス、イタリア、イギリス、ベルギー各国で軍用機に採用され、第一次世界大戦の初期まで偵察、観測機として使用された。ブレリオXI 単葉機は殆ど外観を変えることなく寸法を拡大、馬力を強化した多くの発展型が開発された。
第一次世界大戦
第一次世界大戦を通じて、軍用機やその用法が大きく発達したが、日本の航空兵力のレベルは幼稚なもので、陸軍航空の主力はモーリス・ファルマン1914年型のモ式四型とそのパワーアップ型モ式六型で、海軍も似たような状況で、連合軍の一員として恥ずかしいものであった。
日本陸海軍の航空の基礎づくり
1917(大正6)年)、山下汽船社長、山下亀二郎が陸海軍に新鋭機購入資金としてそれぞれ50万円献金を行い、陸軍は大正7ン年にソッピース改造一型偵察爆撃機20機、ソッピース3バップ戦闘機50機その他を購入、海軍もソッピース3バップ戦闘機、ショート320大型水上機、チエリ飛行艇各1機を購入した。陸軍上層部もまた近代化を図るため大正6年に、フランスからニューポール24戦闘機24機とスパッドS7戦闘機を空中射撃研究用に輸入している。
1918(大正7)年、第一次世界大戦後、日本は航空後進国になっていた。
陸軍は陸軍航空を本格的戦力化するため、大正8年、フランスからフォール航空教育団を招致し、機種をフランス機で固めた一揃いの近代的な陸軍航空を誕生させた。海軍は大正10年、イギリスからセンビル航空教育団を招き、イギリス系の機種で固めて海軍航空の近代化を図った。 この時期から陸海軍機に日の丸が付けられるようになり、「青い目の日の丸軍用機」が誕生した。
使用機の国産化を図る狙いで陸海軍の軍用機の競争試作が始まる。
1924(大正13年)、中島のE2NIが海軍一五式水上偵察機として制式化された。同年、三菱の2MBI(海軍の一三式艦上攻撃機の改造)が陸軍八七式軽爆撃機として制式化された。1926(大正15年)、川崎のKDA-2が陸軍八八式偵察機として採用された。同年、中島のグロスターガムベッド改が三式艦上戦闘機になった。
皇紀年号下二桁の機体命名法
昭和の初めに、日本軍用機の制式名称は制式採用された皇紀年号下二桁の機体命名法に改められた。陸軍では大正15年(昭和元年(西暦1926)年に採用されここの方式を最初に採用した機体が昭和2年(皇紀2858年)に制式化された八七式重爆撃機と八七式軽爆撃機である。 海軍はすこし遅れて、八九式艦攻撃機が最初の機体である。皇紀年数は西暦年数+660年、昭和年数+2585年で計算できる。
試作機の名称付与について、海軍では昭和7年から、試作発注年度の年号に機種名を付けて、七試艦上攻撃機のように呼び、陸軍機の試作名称キ番号は昭和8年以降に採用され、計画順に付与された通し番号になっている。
日本最初の国産戦闘機
昭和2年、陸軍は甲式四型戦闘機の後継機になる新型高性能戦闘機の試作を三菱、中島、川崎の三者に命じ、審査結果不合格となったが、その改修を中島に内示してNC型増加試作機を製作し、その試作機第号機をもとに制式化し、九一式型戦闘機が誕生した。
複葉機から低翼単葉機への進歩
海軍では、昭和8年、横須賀海軍航空廠が試作した仮称一三式艦上攻撃機が九二式艦上攻撃機として制式採用された。
昭和7年、九○式艦上戦闘機の後継機として九○式艦上戦闘機の性能向上型が九五式艦上戦闘機として制式採用された。
昭和11年(皇紀2595年)、三菱の九試単座戦闘機(低翼単葉)が九六式艦上戦闘機として制式採用された。
全金属製単葉機への近代化
1930年代後半に一気に全金属製単葉機えと近代化された。
日本の航空界の黄金時代
昭和10年を迎える頃になると、日本の航空技術は欧米に追いつくべく官民挙げて務めた結果、国産機の開発技術は世界水準に達し、さらにそれを越えたと評価される近代軍用機までも製造できるまでになった。
民間航空の分野でも、「神風号」や「ニッポン号」、「航研機」などによる数々の世界的記録飛行が行われ、日本航空界の黄金時代でもあった。
皇紀26000年(昭和15年)採用の機体に限り、陸軍では「百式」と呼び、海軍では「零式」呼称された。百式司令部偵察機、百式重爆撃機(呑龍)、百式[輸送機、ゼロ戦、零式水上偵察機、零式水上観測機(ゼロ観)、零式輸送機など。
外国機の買い入れ、およびライセンス生産
陸海軍はそれぞれ別個に多種類の外国機を主として米国および独逸から買い入れ、ライセンス生産を行いながれ技術の習得を図り、国産化を進めてきた。陸軍の例を挙げれば次の通りである。
ドニエルDo-N(八七式重爆撃機)大正年
ユンカースK-37(九三式軽爆撃機)昭和3年
ユンカースG-38四発輸送機(九二式超重爆撃機)昭和3年
ユンカースJu86輸送機 昭和12年
ビュッカ-「ユングマン」練習機(四式基本練習機)昭和13年
ビュッカ-「ユングマイスター」練習機 昭和013年
ユンカースJu87A急降下爆撃機 昭和14年
メッサーシュミットBf109E-7戦闘機 昭和16年
フイーゼラー「シュトルヒ」連絡機 昭和16年
メッサーシュミットMe210A-1双発戦闘機 昭和18年
フオッケウルフFw190A5戦闘機 昭和18年
メッサーシュミットMe163ロケット戦闘機(資料のみ) 昭和19年
メッサーシュミットMe262ジェット戦闘機(資料のみ) 昭和19年
メッサーシュミットBf109E-7戦闘機のエンジンは液冷のダイムラーベンツBE601DEで、燃料噴射やローラベアリング軸受を用いた最新技術を採用した高性能エンジンであり、陸軍はその製造権を買うことを決めたが、すでに海軍にライセンスを販売してあるので独逸側からは陸海軍で調整するようにとの忠告を受けたが、調整がつかず結局、陸海軍が別々にダイムラーベンツ社から製造権を買うことになり、独逸側の嘲笑を買った。(国費の無駄使い)
第二次世界大戦(支那事変から大東亜戦争に突入、戦後、太平洋戦争と呼称される)
緒戦において、海軍は九六式艦上戦闘機、九六式陸上攻撃機、九七式一号艦上攻撃機、九七式二号艦上攻撃機、九七式飛行艇、九八式陸上偵察機、九九式艦上爆撃機、九九式飛行艇、零式艦上戦闘機、 陸軍は九七式司令部偵察機、九七式重爆撃機、九七式戦闘機、九七式単発軽爆撃機、九七式輸送機、九八式直協偵察機、九八式軽爆撃機、九九式軍偵察機、百式司令部偵察機、一式戦闘機(隼))を投入し、錬度の高いパイロットの技量とあいまって赫赫たる戦果を挙げたが、爾後、ガソリン、資材の欠乏、熟練工員の徴兵による航空機製造の品質の低下、および熟練パイロットの絶対数の不足等により、航空戦力は栄光の座から急速に奈落の底に落ち、同時に安定した2.000馬力のエンジンの開発の遅れもあり、次々に新鋭機を大量に投入してくる米軍の航空勢力の前に完敗した。
しかし戦後、米国で実施された鹵獲、捕獲された陸海軍機の試験結果、高オクタン価の燃料と純度の高い潤滑油を供給すれば、「誉」2.000馬力のエンジンを搭載した海軍の「紫電改」、陸軍の「疾風」、などは設計目標値よりも遥かに高い飛行性能と機動性を展示したことが記録され、日本における航空機の設計、製造能力の高さを表している。
米国が長年にわたって日本独自の戦闘機の開発、製造を抑えてきた理由はこのあたりにも大きな理由があるものと考えられる。
付表:軍用機の試作と制定の記録
戦前-戦中
陸軍
陸軍の航空機は九三式以降「キ○○」と言う開発番号が振られている。陸軍は航空企業に開発仕様書を数多く提出し、要求も技術をはるかに上回ることが少なくなかった。このため、実現しなかった航空機、試作で終わった航空機がかなりの数に上るが、膨大な試作機を製作させることで、結果として国内各社の製造技術力を押し上げることとなった。「キ」は機体の略。1933年(昭和8)制定の試作呼称のこと。ちなみに「ク」はグライダー、「ハ」は発動機である。
番号 | 名称 | 製造者 | 生産数 | 備考 |
---|---|---|---|---|
玉虫型飛行器 | 二宮忠八 | 0 | 制作中止 | |
モ式四型偵察機 | 陸軍航空工廠 | 84 | モーリス・ファルマン MF.11 | |
甲式一型練習機 | 三菱造船 | 57 | ニューポール81E2 | |
甲式二型練習機 | 中島飛行機 | 85 | ニューポール83E2 | |
甲式三型戦闘機/練習機 | 陸軍/中島 | 308 | ニューポール24C1 | |
ソ式偵察機/戦闘機/練習機 | 陸軍 | 15 | 英ソッピース バップ | |
乙式一型偵察機 | 930以上 | サルムソン2A2 ライセンス生産 |
||
中島式五型練習機 | 中島飛行機 | 100 | 陸軍初の国産機 | |
甲式四型戦闘機 | 654 | ニューポール29C2 ライセンス生産 |
||
己式一型練習機 | 三菱造船/東京砲兵工廠 | 159 | アンリオHD12F2 ライセンス生産 |
|
八七式重爆撃機 | 川崎航空機 | 34 | 設計はドルニエ | |
八七式軽爆撃機 | 三菱航空機 | 48 | 三菱一三式艦攻の陸軍型 | |
八八式偵察/軽爆撃機 | 川崎 | 1,117 | ||
九一式戦闘機 | 中島 | 450 | ||
九二式偵察機 | 三菱 | 230 | ||
九二式戦闘機 | 川崎 | 385 | ||
キ1 | 九三式重爆撃機 | 三菱 | 118 | ユンカースK37基本 |
キ2 | 九三式双発軽爆撃機 | 174 | ||
キ3 | 九三式単発軽爆撃機 | 川崎 | 243 | |
キ4 | 九四式偵察機 | 中島 | 383 | |
キ5 | キ5試作戦闘機 | 川崎 | 1 | 不採用 |
キ6 | 九五式二型練習機 | 中島 | 20 | 準制式 |
キ7 | キ7試作機上作業練習機 | 三菱 | 2 | 不採用 |
キ8 | キ8試作複座戦闘機 | 中島 | 5 | |
キ9 | 九五式一型練習機 | 石川島飛行機 | 2,618 | 愛称「赤とんぼ」 |
キ10 | 九五式戦闘機 | 川崎 | 588 | |
キ11 | キ11試作戦闘機 | 中島 | 4 | 不採用 |
キ12 | キ12試作戦闘機 | 1 | ||
キ13 | キ13試作襲撃機 | 0 | 計画のみ | |
キ14 | キ14試作偵察機 | 三菱 | 0 | |
キ15 | 九七式司令部偵察機 | 437 | ||
キ16 | キ16試作輸送機 | 中島 | 0 | 計画のみ |
キ17 | 九五式三型練習機 | 石川島 | 560 | 準制式 |
キ18 | キ18試作戦闘機 | 三菱 | 1 | 不採用 |
キ19 | キ19試作重爆撃機 | 中島 | 8 | |
キ20 | 九二式重爆撃機 | 三菱 | 6 | |
キ21 | 九七式重爆撃機 | 2,046 | ||
キ22 | キ22試作爆撃機 | 川崎 | 0 | 計画のみ |
キ23 | キ23試作滑空機 | 福田軽飛行機 | 0 | |
キ24 | キ24試作滑空機 | 石川島 | 110 | Gr9基本・準制式 |
キ25 | キ25試作滑空機 | 2 | ゲッヒンゲン3基本・不採用 | |
キ26 | キ26試作滑空機 | 1 | 開発中止 | |
キ27 | 九七式戦闘機 | 中島 | 3382 | |
キ28 | キ28試作戦闘機 | 川崎 | 2 | 不採用 |
キ29 | キ29試作軽爆撃機 | 立川(旧石川島) | 2 | 開発中止 |
キ30 | 九七式軽爆撃機 | 三菱 | 820 | |
キ31 | キ31試作軽爆撃機 | 中島 | 0 | 開発中止 |
キ32 | 九八式軽爆撃機 | 川崎 | 846 | |
キ33 | キ33試作戦闘機 | 三菱 | 2 | 不採用(競争試作) |
キ34 | 九七式輸送機 | 中島 | 332 | 中島AT-2 |
キ35 | キ35試作直協偵察機 | 三菱 | 0 | 計画のみ |
キ36 | 九八式直協偵察機 | 立川 | 1,333 | |
キ37 | キ37試作複座戦闘機 | 中島 | 0 | 計画のみ |
キ38 | キ38試作双発複座戦闘機 | 川崎 | 0 | |
キ39 | キ39試作複座戦闘機 | 三菱 | 0 | |
キ40 | キ40試作司令部偵察機 | 0 | ||
キ41 | 高速輸送機 | 中島 | 0 | |
キ42 | キ42試作重爆撃機 | 三菱 | 0 | |
キ43 | 一式戦闘機「隼」 | 中島 | 5,751 | |
キ44 | 二式単座戦闘機「鍾馗」 | 1,175 | ||
キ45 | キ45試作複座戦闘機 | |||
キ45改 | 二式複座戦闘機「屠龍」 | 川崎 | 1,690 | |
キ46 | 一〇〇式司令部偵察機 | 三菱 | 1,746 | |
キ47 | キ47試作軽爆撃機 | 0 | 計画のみ | |
キ48 | 九九式双発軽爆撃機 | 川崎 | 1,977 | |
キ49 | 一〇〇式重爆撃機「呑龍」 | 中島 | 786 | |
キ50 | キ50試作重爆撃機 | 三菱 | 0 | 計画のみ |
キ51 | 九九式襲撃機/九九式軍偵察機 | 約2,000 | ||
キ52 | キ52試作攻撃機 | 中島 | 0 | 計画のみ |
キ53 | キ53試作多座戦闘機 | 0 | ||
キ54 | 一式双発高等練習機 | 立川 | 1,342 | |
キ55 | 九九式高等練習機? | 1,386 | ||
キ56 | 一式貨物輸送機 | 川崎 | 121 | ロッキード14「スーパーエレクトラ」基本 |
キ57 | 一〇〇式輸送機 | 三菱 | 517 | |
キ58 | キ58試作多座掩護戦闘機 | 中島 | 3 | 不採用 |
キ59 | 一式輸送機 | 日本国際航空 | 19 | 民間機TK-3改造開発 |
キ60 | キ60試作戦闘機 | 川崎 | 3 | 不採用 |
キ61 | 三式戦闘機「飛燕」 | 2,849 | ||
キ62 | キ62試作戦闘機 | 中島 | 0 | 「隼」の性能向上型・計画のみ |
キ63 | キ63試作戦闘機 | 0 | 「鍾馗」の発動機転換・計画のみ | |
キ64 | キ64試作戦闘機 | 川崎 | 1 | 不採用 |
キ65 | キ65試作戦闘機 | 三菱/満州飛行機 | 0 | 開発中止 |
キ66 | キ66試作急降下爆撃機 | 川崎 | 6 | 不採用 |
キ67 | 四式重爆撃機「飛龍」 | 三菱 | 707 | |
キ68 | キ68試作長距離爆撃機 | 中島 | 0 | 海軍13試大攻・不採用 |
キ69 | キ69試作爆撃掩護機 | 三菱 | 0 | 計画のみ |
キ70 | キ70試作司令部偵察機 | 立川 | 3 | 開発中止 |
キ71 | キ71試作軍偵/襲撃機 | 満州 | 3 | 不採用 |
キ72 | キ72試作直協偵察機 | 立川 | 0 | 計画のみ |
キ73 | キ73試作戦闘機 | 三菱 | 0 | 計画のみ |
キ74 | キ74試作遠距離偵察爆撃機 | 立川 | 14 | 敗戦により開発中断 |
キ75 | キ75試作多座戦闘機 | 中島 | 0 | 計画のみ |
キ76 | 三式指揮連絡機 | 日本国際航空 | STOL機、陸軍初の艦上固定翼機 | |
キ77 | キ77長距離研究機 | 立川 | 2 | 研究目的 |
キ78 | キ78高速研究機 | 川崎 | 1 | |
キ79 | 二式高等練習機 | 満州 | 3,710 | |
キ80 | キ80試作重爆指揮官機 | 中島 | 2 | 開発中止 |
キ81 | キ81試作軽爆指揮官機 | 川崎 | 0 | |
キ82 | キ82試作爆撃機 | 中島 | 0 | 計画のみ |
キ83 | キ83試作遠距離戦闘機 | 三菱 | 4 | 敗戦により開発中断 |
キ84 | 四式戦闘機「疾風」 | 中島 | 3,421 | |
キ85 | キ85試作遠距離爆撃機 | 川崎 | 0 | キ68の移転・計画中止 |
キ86 | 四式基本練習機 | 日本国際 | 1030 | |
キ87 | キ87試作高高度戦闘機 | 中島 | 2 | 敗戦により開発中断 |
キ88 | キ88試作防空戦闘機 | 川崎 | 0 | 開発中止 |
キ89 | キ89試作研究機 | 0 | 計画のみ | |
キ90 | キ90試作遠距離爆撃機 | 三菱 | 0 | 開発中止 |
キ91 | キ91試作遠距離爆撃機 | 川崎 | 0 | |
キ92 | キ92試作輸送機 | 立川 | 1 | |
キ93 | キ93試作襲撃機 | 陸軍航空工廠 | 1 | 敗戦により開発中断 |
キ94 | キ94試作高高度防空戦闘機 | 立川 | 2 | |
キ95 | キ95試作司令部偵察機 | 三菱 | 0 | |
キ96 | キ96試作双発戦闘機 | 川崎 | 3 | 開発中止 |
キ97 | キ97試作輸送機 | 三菱 | 0 | |
キ98 | キ98試作戦闘襲撃機 | 満州 | 0 | |
キ99 | キ99試作局地戦闘機 | 三菱 | 0 | 計画中止 |
キ100 | 五式戦闘機 | 川崎 | 393 | |
キ101 | キ101試作夜間戦闘機 | 中島 | 0 | 計画のみ |
キ102 | キ102試作戦闘/襲撃機 | 川崎 | 238 | 非制式で実戦投入 |
キ103 | キ103試作襲撃機 | 三菱 | 0 | 計画のみ |
キ104 | キ104試作迎撃戦闘機 | 0 | ||
キ105 | キ105試作輸送機「鴻」 | 日本国際 | 9 | 敗戦により開発中断 |
キ106 | キ106試作戦闘機 | 立川 | 10 | 「疾風」木製化・敗戦により開発中断 |
キ107 | キ107試作初歩練習機 | 東京航空 | 45 | 木製練習機 |
キ108 | キ108試作高高度戦闘機 | 川崎 | 2 | 研究目的 |
キ109 | キ109試作特殊防空戦闘機 | 三菱 | 22 | 非制式で実戦投入 |
キ110 | キ110試作双発練習機 | 立川 | 0 | キ54木製化・敗戦により開発中断 |
キ111 | キ111試作燃料輸送機 | 0 | 計画のみ | |
キ112 | キ112試作重爆撃機 | 三菱 | 0 | |
キ113 | キ113試作戦闘機 | 中島 | 0 | 「疾風」特殊鋼製化・敗戦により開発中断 |
キ114 | キ114試作輸送機 | 立川 | 0 | キ92木製化・計画のみ |
キ115 | 特殊攻撃機「剣」 | 中島 | 105 | 敗戦により開発中断 |
キ116 | キ116試作戦闘機 | 満州 | 1 | 「疾風」発動機転換・敗戦により開発中断 |
キ117 | キ117試作戦闘機 | 中島 | 0 | |
キ118 | キ118試作戦闘機 | 三菱 | 0 | 計画のみ |
キ119 | キ119試作戦闘爆撃機 | 川崎 | 0 | 敗戦により開発中断 |
キ120 | キ120試作輸送機 | - | - | 未着手 |
キ128 | キ128試作戦闘機 | - | - | |
キ147 | イ号一型甲無線誘導弾 | 三菱 | - | |
キ148 | イ号一型乙無線誘導弾 | 川崎 | - | |
キ167 | キ167試作練習機 | - | - | 未着手 |
キ174 | キ174試作軽爆撃機 | 立川 | - | 未着手 |
キ200 | キ200試作高高度局地戦闘機「秋水」 | 三菱 | 2 | Me163の設計参考・海軍との共同開発 敗戦により開発中断 |
キ201 | キ201試作戦闘爆撃機「火龍」 | 中島 | 0 | Me262の設計参考・ 敗戦により開発中断 |
キ202 | キ202試作高高度局地戦闘機 | 三菱 | 0 | 計画のみ |
ク1 | 二式小型輸送滑空機 | 前田航研 | - | |
ク7 | ク7試作輸送滑空機「まなづる」 | 日本国際 | - | |
ク8 | 四式特殊輸送機 | - | ||
ク11 | ク11試作輸送滑空機 | 日本小型飛行機 | - | 不採用 |
陸軍小型患者輸送機 | 石川島 | 25 | フォッカー スーパーユニバーサル基本 | |
ロ式輸送機 | 立川 | 45 | ロッキード・スーパーエレクトラ ライセンス生産 |
|
タ号試作特殊攻撃機 | 立川/日本国際 | 立川製2、日本国際製1 | 敗戦により開発中断 | |
カ号観測機 | 萱場製作所 | 98 | オートジャイロ、ケレットKD-1A基本 | |
テ号観測機 | 神戸製鋼 | 1 | STOL機、テスト飛行中に墜落して開発中止 | |
特殊蝶番レ号 | 横浜高工 | 1 | 敗戦により開発中断 | |
ロ号B型高々度研究機 | 立川 | - | 研究目的 | |
試作遠距離爆撃機「富嶽」 | 中島 | 0 | 未着手 |
海軍は陸軍ほどに仕様書を出さなかったものの、その要求の過酷さは陸軍をも上回るものであり、また開発内容も時によって次々に変更された。そのような海軍の要求に応えて製作された『零式艦上戦闘機(零戦)』は、世界で最も有名な日本製の航空機であるといえる。機体番号は先頭のローマ字が機種、次いで数字が開発順序、次のローマ字は開発会社(M・三菱、N・中島、K・川西など)で、派生型を示す数字が続き、機体によっては小規模改修を示す小文字のアルファベットが付加される。派生型の用途によってその後にローマ字がつくこともある。(例:局地戦闘機J1Nの派生である二式陸上偵察機は原型機のJ1N1に陸上偵察機を示すRを付加しJ1N1-Rと表記される)後年には制式名称が「○○式--」から固有名詞に変わった。名称の基準は、以下の通り。
A:艦上戦闘機 | ||||
番号 | 名称 | 製造者 | 備考 | |
---|---|---|---|---|
一〇式艦上戦闘機 | 三菱 | 最初の国産戦闘機(設計は英スミス氏) | ||
A1N | 三式艦上戦闘機 | 中島飛行機 | 中島グロースター式 | |
A2N | 九〇式艦上戦闘機 | 中島 | 最初の純国産戦闘機 | |
A3N/M | 七試艦上戦闘機 | 中島/三菱 | 両者不採用 | |
A3N | 九〇式練習戦闘機 | 中島 | ||
八試複座戦闘機 | 中島/三菱 | 両者不採用 | ||
A4N | 九五式艦上戦闘機 | 中島 | ||
九試単座戦闘機 | 中島/三菱 | 三菱案が九六式に採用 | ||
A5M | 九六式艦上戦闘機 | 三菱重工業 | 最初の全金属・単翼戦闘機 | |
A6M | 零式艦上戦闘機 | 三菱 | ||
A7M | 17試艦上戦闘機「烈風」 | 敗戦により中断 | ||
B:艦上攻撃機 | ||||
番号 | 名称 | 製造者 | 備考 | |
一〇式艦上雷撃機 | 三菱 | |||
B1M | 一三式艦上攻撃機 | |||
B2M | 八九式艦上攻撃機 | |||
B3Y | 九二式艦上攻撃機 | 海軍航空技術廠(空技廠) | ||
B4Y | 九六式艦上攻撃機 | |||
B5N | 九七式一号艦上攻撃機 | 中島 | ||
B5M | 九七式二号艦上攻撃機 | 三菱 | ||
B6N | 艦上攻撃機「天山」 | 中島 | ||
B7A | 艦上攻撃機「流星」 | 愛知航空機 | ||
C:(艦上)偵察機 | ||||
番号 | 名称 | 製造者 | 備考 | |
C1M | 一〇式艦上偵察機 | 三菱 | ||
C2N | フォッカー式偵察機 | 中島 | フォッカー スーパーユニバーサル ライセンス生産 |
|
C3N | 九七式艦上偵察機 | 中島 | ||
C4A | 13試高速陸上偵察機 | 愛知 | 計画中止 | |
C5M | 九八式陸上偵察機 | 三菱 | 九七司偵の海軍仕様 | |
C6N | 艦上偵察機「彩雲」 | 中島 | ||
D4Y1-C | 二式艦上偵察機 | 空技廠 | ||
E4N2-C | 九〇式二号艦上偵察機 | 中島 | ||
D:艦上爆撃機 | ||||
番号 | 名称 | 製造者 | 備考 | |
D1A1 | 九四式艦上爆撃機 | 愛知 | ||
D1A2 | 九六式艦上爆撃機 | |||
D2 | 8試特殊爆撃機 | 愛知・中島 | 不採用 | |
D3N | 十一試艦上爆撃機 | 中島 | ||
D3A | 九九式艦上爆撃機 | 愛知 | ||
D3Y | 練習用爆撃機「明星」 | 空技廠 | ||
D4Y | 艦上爆撃機「彗星」 | |||
E:水上偵察機 | ||||
番号 | 名称 | 製造者 | 備考 | |
モーリス・ファルマン式大型水上機 | 横須賀海軍工廠 | モーリス・ファルマン MF.11 | ||
横廠式ロ号甲型水上偵察機 | ||||
ハンザ式水上偵察機 | 愛知 | ハンザ・ブランデンブルク W.29 戦利品をコピー |
||
二式水上偵察機 | ハインケル HD-25 ライセンス生産 |
|||
E1Y | 一四式水上偵察機 | 横須賀海軍工廠 | ||
E2N | 一五式水上偵察機 | 中島 | ||
E3A | 九〇式一号水上偵察機 | 愛知 | ||
E4N | 九〇式二号水上偵察機 | 中島 | ||
E5Y/K | 九〇式三号水上偵察機 | 横須賀・川西航空機 | ||
E6Y | 九一式水上偵察機 | 横須賀 | ||
E7K | 九四式水上偵察機 | 川西 | ||
E8N | 九五式水上偵察機 | 中島 | ||
E9W | 九六式小型水上機 | 渡辺鉄工所 | ||
E10A | 九六式水上偵察機 | 愛知 | ||
E10K | 9試夜間偵察機 九四式輸送機 |
川西 | ||
E11A | 九八式水上偵察機 | 愛知 | ||
E11K | 11試特殊水上偵察機 九六式輸送機 |
川西 | ||
E12 | 12試三座水上偵察機 | 愛知・中島・川西 | 不採用 | |
E13A | 零式三座水上偵察機 | 愛知 | ||
E14Y | 零式小型水上偵察機 | 空技廠 | ||
E15K | 水上偵察機「紫雲」 | 川西 | ||
E16A | 水上偵察機「瑞雲」 | 愛知 | ||
F:水上観測機 | ||||
番号 | 名称 | 製造者 | 備考 | |
F1A | 10試水上観測機 | 愛知 | 不採用 | |
F1M | 零式水上観測機 | 三菱 | ||
G:陸上攻撃機 | ||||
番号 | 名称 | 製造者 | 備考 | |
G1M | 九三式陸上攻撃機 | 三菱 | ||
G2H | 九五式陸上攻撃機 | 広海軍工廠 | ||
G3M | 九六式陸上攻撃機 | 三菱 | ||
LB-2長距離爆撃機 | 中島 | 試作のみ | ||
G4M | 一式陸上攻撃機 | 三菱 | ||
G5N | 13試陸上攻撃機「深山」 | 中島 | 不採用 | |
G6M | 12試陸上攻撃機改(翼端掩護機) | 三菱 | 計画のみ | |
G7M | 16試陸上攻撃機「泰山」 | 計画中止 | ||
17試陸上攻撃機 | 川西 | |||
G8N | 18試陸上攻撃機「連山」 | 中島 | 敗戦により中断 | |
G10N | 陸上攻撃機「富嶽」 | 未着手のまま中止 | ||
長距離爆撃機TB | 川西 | 計画中止 | ||
H:飛行艇 | ||||
番号 | 名称 | 製造者 | 備考 | |
フェリックストウ F.5 | 愛知他 | ライセンス生産 | ||
H1H | 一五式飛行艇 | 広海軍工廠 | ||
H2H | 八九式飛行艇 | 広 | ||
H3H | 九〇式一号飛行艇 | |||
H3K | 九〇式二号飛行艇 | 川西 | 設計はショート社 | |
H4H | 九一式飛行艇 | 広 | ||
H5Y | 九九式飛行艇 | 空技廠 | ||
H6K | 九七式飛行艇 | 川西 | ||
H7Y | 十二試特殊飛行艇 | 空技廠 | 計画中止 | |
H8K | 二式飛行艇 | 川西 | ||
H9A | 二式練習飛行艇 | 愛知 | ||
H10H | 14試中型飛行艇 | 広 | 計画中止 | |
J:陸上戦闘機 | ||||
番号 | 名称 | 製造者 | 備考 | |
J1N | 夜間戦闘機「月光」 | 中島 | ||
J2M | 局地戦闘機「雷電」 | 三菱 | ||
J3K | 17試陸上戦闘機 | 川西 | 計画中止(陣風の元設計) | |
J4M | 局地戦闘機「閃電」 | 三菱 | 計画中止 | |
J5N | 局地戦闘機「天雷」 | 中島 | ||
J6K | 陸上戦闘機「陣風」 | 川西 | ||
J7W | 18試局地戦闘機「震電」 | 九州飛行機 | 敗戦により中断 | |
J8M | 局地戦闘機「秋水」 | 三菱 | Me163の設計参考・陸軍との共同開発 敗戦により中断 |
|
N1K1-J | 局地戦闘機「紫電」 | 川西 | 水上戦闘機「強風」の陸上化・中翼 | |
N1K2-J | 局地戦闘機「紫電」改 | 川西 | 「紫電」機体の全面改修 | |
K:練習機 | ||||
番号 | 名称 | 製造者 | 備考 | |
横廠式イ号甲型水上練習機 | 横須賀 | |||
アブロ式練習機 | 中島、愛知 | アブロ 504 ライセンス生産 | ||
K1Y | 一三式練習機 | 横須賀 | ||
K2Y | 三式練習機 | 横須賀 | ||
K3M | 九〇式機上作業練習機 | 三菱 | ||
K4Y | 九〇式水上初歩練習機 | 横須賀 | ||
K5Y | 九三式中間練習機 | |||
K6 | 11試水上中間練習機 | 川西・渡辺 | 不採用 | |
K7M | 11試機上作業練習機 | 三菱 | ||
K8K | 零式水上初歩練習機 | 川西 | ||
K9W | 陸上初歩練習機「紅葉」 | 渡辺 | ||
K10W | 二式陸上中間練習機 | |||
K11W | 機上作業練習機「白菊」 | |||
A5M4-K | 二式練習用戦闘機 | 三菱 | ||
A6M2-K | 零式練習用戦闘機 | |||
L:輸送機 | ||||
番号 | 名称 | 製造者 | 備考 | |
L1N | 中島式双発輸送機 | 中島 | 中島AT-2の海軍仕様 | |
L2D | 零式輸送機 | 昭和飛行機 | DC-3のライセンス生産 | |
L3Y | 九六式陸上輸送機 | 三菱 | ||
L4M | 三菱双発輸送機 | 三菱MC-20の海軍仕様 | ||
L7P | 13試小型輸送機 | 日本飛行機 | 不採用 | |
G6M1-L | 一式陸上輸送機 | 三菱 | ||
H6K2-L | 九七式輸送飛行艇 | 川西 | ||
H8K2-L | 二式輸送飛行艇「晴空」 | |||
H11K1-L | 大型輸送飛行艇「蒼空」 | |||
M・MX:特殊機 | ||||
番号 | 名称 | 製造者 | 備考 | |
M6A | 特殊攻撃機「晴嵐」 | 愛知 | 伊四〇〇型潜水艦搭載用の水上攻撃機 | |
MXJ1 | 十七試初歩滑空練習機「若草」 | |||
MXY1 | 試作実験用飛行機第一号 | 空技廠 | ||
MXZ1 | 十七試初歩滑空練習機 | 美津濃 | ||
MXY2 | 試作実験用飛行機第二号 | 空技廠 | ||
MXY3 | 試作滑空標的機 | |||
MXY4 | 一式標的機 | |||
MXY5 | 16試特殊輸送機 | |||
MXY6 | 試作前翼滑空機 | |||
MXY7 | 特殊攻撃機「桜花」 | |||
MXY8 | 秋水滑空機 | |||
MXY9 | 「秋火」 | |||
特殊攻撃機「橘花」 | 中島 | Me262の改造開発「皇国2号兵器」 敗戦により中断 |
||
特殊攻撃機「梅花」 | 空技廠 | 計画のみ | ||
特殊攻撃機「藤花」 | 中島 | |||
特殊攻撃機「神龍」 | 艦政本部 | |||
N:水上戦闘機 | ||||
番号 | 名称 | 製造者 | 備考 | |
N1K | 水上戦闘機「強風」 | 川西 | ||
A6M2-N | 二式水上戦闘機 | 中島 | ||
P:陸上爆撃機 | ||||
番号 | 名称 | 製造者 | 備考 | |
P1Y | 陸上爆撃機「銀河」 | 空技廠 | ||
Q:哨戒機 | ||||
番号 | 名称 | 製造者 | 備考 | |
Q1W | 陸上哨戒機「東海」 | 九州 | ||
Q2M | 陸上哨戒機「大洋」 | 三菱 | 計画中止 | |
Q3W | 陸上哨戒機「南海」 | 九州 | ||
R:陸上偵察機 | ||||
番号 | 名称 | 製造者 | 備考 | |
R1Y | 陸上偵察機「暁雲」 | 空技廠 | 計画のみ | |
R2Y | 陸上偵察機「景雲」 | |||
J1N1-R | 二式陸上偵察機 | 中島 | ||
S:夜間戦闘機 | ||||
番号 | 名称 | 製造者 | 備考 | |
J1N-S | 夜間戦闘機「月光」 | 中島 | ||
P1Y1-S | 夜間戦闘機「白光」 | 空技廠・中島 | 仮称銀河二一型 | |
P1Y2-S | 夜間戦闘機「極光」 | 空技廠・川西 | 仮称銀河二六型 | |
S1A | 夜間戦闘機「電光」 | 愛知 | 敗戦により中断 |
現代の日本の航空産業
太平洋戦争の敗戦と同時に連合軍が各地に駐留すると、日本は航空機の製作はおろか、研究や運航までも10年間禁じられ、占領7年を通して各社は完全に解体され、他業種への転換を図られた。失職した技術者や技師は自動車や鉄道などへと流出したが、彼らはその業界の成長を支えていくこととなる。
朝鮮戦争の際、米軍が戦闘機の修理や部品供給を日本に発注したことから、航空産業は復活を迎える。 しかしGHQ占領終結、その後航空機開発が1957年(昭和32年)に解禁されたものの[時代はジェット機などの新エンジン機、大型の旅客機、超音速機など新たな時代への転換期であり、後発の日本の航空機産業が受けた技術的な打撃は非常に大きかった。完全に出遅れた日本企業は防衛庁向けのアメリカ製航空機(F-86戦闘機)のライセンス生産を手がけることで、失われた基礎技術を得ることとなった。完全に復活が出来た企業は、占領中に他業種で生き残りを図った三菱、富士、川崎といった大企業であった。
こうして再取得した技術と戦前の技術を合わせ、T-1やYS-11といった航空機が生まれたが、主に価格の面で大量生産する欧米機に比べて不利であり、いずれも少量の生産で終わった。三菱や富士は独自にビジネス機分野へ参入したものの、販売不振などで撤退した。このため、各社は専ら安定した自衛隊関連の需要か通商」産業省が斡旋するぼボーイング機への開発協力へ甘んじる事となった。また各社は占領以来複合業種の企業であり、航空機開発にかかる予算の暴騰もあり、他業種を守る為、あるいは好調な他業種に依存するようになり、国内での機体開発は躊躇するようになった。
戦闘機 | ||||
名称 | 製造者 | 生産数 | 原製造者 | 備考 |
---|---|---|---|---|
F-86F戦闘機 | 三菱重工業 | 300 | ノースアメリカン | ライセンス生産 |
F-104J戦闘機 | 207 | ロッキード | ライセンス生産 (J:単座、複座のDJは再組み立てのみ) |
|
F-4EJ/EJ改戦闘機 | 138/90 | マクドネル・ダグラス | ライセンス生産(EJ改:EJの改造) | |
F-15J/DJ戦闘機 | 163/36 | ライセンス生産 (電子機器は国産、J:単座/DJ:複座) |
||
F-1支援戦闘機 | 77 | T-2ベースの改造開発 | ||
F-2A/B戦闘機 | 64/34 | ロッキード・マーティン | F-16ベースの共同開発 (A:単座/B:複座、試作機を含む) |
|
偵察機 | ||||
名称 | 製造者 | 生産数 | 原製造者 | 備考 |
RF-4EJ偵察機 | 三菱重工業 | 15 | マクドネル・ダグラス | F-4EJからの改造 |
YS-11EL/EB電子測定機 | 日本飛行機(改造) | 4 | 日本航空機製造 | YS-11C改造、EL→EB |
輸送機 | ||||
名称 | 製造者 | 生産数 | 原製造者 | 備考 |
YS-11C/P/PC輸送機 | 日本航空機製造 | 7/4/1 | C:貨物/P:人員/PC:貨客混載 | |
C-1中型輸送機 | 川崎重工業 | 30 | 設計・試作は日航製 (数字はC-1FTBを除く) |
|
CH-47J輸送ヘリコプター | 調達中 | ボーイング | ライセンス生産 | |
C-X(XC-2)輸送機 | 開発中 | |||
救難機 | ||||
名称 | 製造者 | 生産数 | 原製造者 | 備考 |
H-19救難ヘリコプター | 三菱重工業 | 68※ | シコルスキー | ライセンス生産 |
MU-2S救難機 | 29 | |||
KV-107II-5/A-5救難ヘリコプター | 川崎重工業 | 17/35 | ボーイング・バートル | 生産販売ライセンス(A-5:エンジン強化) |
UH-60J救難ヘリコプター | 三菱重工業 | 調達中 | シコルスキー | ライセンス生産 |
練習機 | ||||
名称 | 製造者 | 生産数 | 原製造者 | 備考 |
T-33A中等練習機 | 川崎重工業 | 210 | ロッキード | ライセンス生産 |
T-34A初等練習機 | 富士重工業 | 124 | ビーチクラフト | |
T-1A/B 中等練習機 | 46/20 | B型は純国産 | ||
T-2 高等練習機 | 三菱重工業 | 96 | ||
T-3 初等練習機 | 富士重工業 | 50 | ビーチクラフト | KM-2Bベースの改造開発 |
T-4 中等練習機 | 川崎重工業 | 212 | 純国産 | |
T-7 初等練習機 | 富士重工業 | 49 | ビーチクラフト | KM-2Fベースの改造開発 |
T-400 基本操縦練習機 | レイセオン | 13 | 三菱重工業 | 三菱MU-300の製造販売権買収 |
YS-11NT 航法訓練機 | 日本航空機製造 | 1 | YS-11C改造 | |
訓練支援機 | ||||
名称 | 製造者 | 生産数 | 原製造者 | 備考 |
YS-11E/EA電子戦訓練支援機 | 日本飛行機(改造) | 2 | 日航製 | YS-11C改造、E→EA |
EC-1電子戦訓練機 | 川崎重工業 | 1 | C-1改造 | |
飛行点検機 | ||||
名称 | 製造者 | 生産数 | 原製造者 | 備考 |
YS-11FC | 日航製 | 3 | 1機新造、2機はYS-11P改造 | |
MU-2J | 三菱重工業 | 4 | ||
試験機 | ||||
名称 | 製造者 | 生産数 | 原製造者 | 備考 |
C-1FTB飛行試験機 | 川崎重工業 | 1 | 元・試作機XC-1 |
※H-19は3自衛隊の総数(個別の数字は不明)
固定翼対潜哨戒機/哨戒機 | ||||
名称 | 製造者 | 生産数 | 原製造者 | 備考 |
---|---|---|---|---|
P2V-7/P-2J対潜哨戒機 | 川崎重工業 | 48/82 | ロッキード | ライセンス生産(P-2Jは国内開発) |
PS-1対潜哨戒飛行艇 | 新明和工業 | 23 | ||
P-3C哨戒機 | 川崎重工業 | 101 | ロッキード | ライセンス生産 |
P-1哨戒機 | 調達中 | 純国産 | ||
回転翼対潜哨戒機/哨戒機 | ||||
名称 | 製造者 | 生産数 | 原製造者 | 備考 |
HSS-1対潜ヘリコプター | 三菱重工業 | 20 | シコルスキー | ノックダウン生産 |
HSS-2/-2A/-2B対潜ヘリコプター | 173 | ライセンス生産(A/Bは国内開発) | ||
SH-60J/SH-60K哨戒ヘリコプター | 103/調達中 | ライセンス生産 (電子機器は国産、Kは国内開発) |
||
掃海機 | ||||
名称 | 製造者 | 生産数 | 原製造者 | 備考 |
KV-107II-3掃海ヘリコプター | 川崎重工業 | 9 | ボーイング・バートル | 生産販売ライセンス |
MCH-101掃海輸送ヘリコプター | 調達中 | アグスタウェストランド | ライセンス生産 | |
偵察機 | ||||
名称 | 製造者 | 生産数 | 原製造者 | 備考 |
EP-3電子戦データ収集機 OP-3C画像情報収集機 |
川崎重工業 | 5 5 |
ロッキード | P-3Cベースに国内開発 |
輸送機 | ||||
名称 | 製造者 | 生産数 | 原製造者 | 備考 |
YS-11M/M-A輸送機 | 日本航空機製造 | 2/2 | M-A:YS-11-400ベース | |
S-61A南極観測ヘリコプター | 三菱重工業 | 2(2) | シコルスキー | ライセンス生産 |
CH-101南極観測ヘリコプター | 川崎重工業 | 調達中 | アグスタウェストランド | |
救難機 | ||||
名称 | 製造者 | 生産数 | 原製造者 | 備考 |
US-1/1A救難飛行艇 | 新明和工業 | 6/14 | 1A:エンジン転換 | |
UH-60J救難ヘリコプター | 三菱重工業 | 19 | シコルスキー | ライセンス生産 |
US-2救難飛行艇 | 新明和工業 | 調達中 | US-1Aベースに改造開発 | |
練習機 | ||||
名称 | 製造者 | 生産数 | 原製造者 | 備考 |
KM-2初等練習機 | 富士重工業 | 62 | ビーチクラフト | T-34Aベースに国内開発 |
T-5初等練習機 | 37 | KM-2Dベースに改造開発 | ||
YS-11T-A機上作業練習機 | 日航製 | 6 | ||
訓練支援機 | ||||
名称 | 製造者 | 生産数 | 原製造者 | 備考 |
UP-2J | 川崎重工業 | 4 | ロッキード | P-2Jベースに国内開発 |
U-36A訓練支援機 | 6 | ゲイツ | リアジェット改造 | |
UP-3D電子訓練支援機 | 川崎重工業 | 3 | ロッキード | P-3Cベースに国内開発 |
試験機 | ||||
名称 | 製造者 | 生産数 | 原製造者 | 備考 |
UP-3C試験評価機 | 川崎重工業 | 1 | ロッキード | P-3Cベースに国内開発 |
※生産数 () 内は既存機からの改造
陸上自衛隊
汎用ヘリコプター | ||||
名称 | 製造者 | 生産数 | 原製造者 | 備考 |
---|---|---|---|---|
H-13H/H-13KH | 川崎重工業 | 75/19 | ベル・エアクラフト | 生産販売ライセンス(KH:国内開発) |
UH-1B/H/J | 富士重工業 | 90/133/調達中 | ライセンス生産(B:初代、H:2代、J:3代・国内開発) | |
UH-60JA | 三菱重工業 | 調達中 | シコルスキー | ライセンス生産 |
攻撃ヘリコプター | ||||
名称 | 製造者 | 生産数 | 原製造者 | 備考 |
AH-1S対戦車ヘリコプター | 富士重工業 | 89 | ベルエアクラフト | ライセンス生産 |
AH-64D戦闘ヘリコプター | 調達中 | ボーイング | ||
輸送ヘリコプター | ||||
名称 | 製造者 | 生産数 | 原製造者 | 備考 |
S-55/H-19 | 三菱重工業 | 68※ | シコルスキー | ライセンス生産 |
KV-107II-4/A-4/A-4A | 川崎重工業 | 41/18/1 | ボーイング・バートル | 生産販売ライセンス (A-4:エンジン強化、A-4A:要人輸送) |
CH-47J/JA | 34/18 | ボーイング | ライセンス生産(JA:航続距離延長) | |
観測ヘリコプター | ||||
名称 | 製造者 | 生産数 | 原製造者 | 備考 |
OH-6J/D | 川崎重工業 | 117/193 | ヒューズ | ライセンス生産(J:初代、D:2代) |
OH-1 | 調達中 | 純国産 | ||
固定翼機 | ||||
名称 | 製造者 | 生産数 | 原製造者 | 備考 |
L-19E連絡機 | 富士重工業 | 22 | セスナ | ライセンス生産 |
LM-1/2連絡機 | 24 | ビーチクラフト | T-34Aベースで国内開発(2:KM-2タイプへの改造) | |
TL-1練習連絡機 | 2 | 陸上自衛隊向けKM-2 | ||
LR-1偵察連絡機 | 三菱重工業 | 20 | 陸上自衛隊向けMU-2 |
※H-19は3自衛他の総数(個別の数字は不明)
ボンバルディア・エアロスペース(三菱重工業が開発参加)
エクリプス・エビエーション(富士重工業が開発参加)
1952年(昭和27年)の航空一部解禁により、かつて航空産業に携わった企業や大学が新型機の自主開発を開始したが、概ね物にならず、アメリカ合衆国製品のライセンス生産を中心とするようになった。その後も自主開発の機会が少なかったため、試作機や研究機の製作数も少ない。
完