情報技術(IT)の基礎編


 この論説は平成12年12月10日、大山ロイヤルホテルで開催された自由民主党鳥取県連合会婦人研修会(130名)における一時間の講演原稿の全文である。
 
 また、平成13年5月24日、米子商工会議所における同会議所女性部総会における講演会(一時間)の講演「情報技術(IT)のあれこれ」はこの原稿を基にして新に編集し直したものである。


            演題「情報技術(IT)の概要」
             副題:デジタル革命の表裏


1.始めに:
 
 私は技術翻訳家として特許庁に提出・申請されております膨大な数の欧米特許文献(その多くが情報技術からみ)の翻訳作業に従事しております。日々、世界の最先端技術に接し、いわば情報技術の第一戦に身を置く者として、現今、盛んに叫ばれております情報技術(IT)、あるいはデジタル革命とは一体どうゆうことかについて分かり易く説明してまいりたいと思います。


 まず定義についてちょっと難しいかもしれませんが御辛抱願います。基本的なことがらですから。難しいのはここだけです。
 
 「情報技術」即ち、Information Technology (IT)とは、ハードウエア(固いものの意)、即ち、人工衛星や光ファイバーを含む骨幹通信網、広域および地域通信網、各種通信設備、接続装置、端末機器等の物理的構成)とソフトウエア(柔らかいものの意)、即ち、発想、企画、設計指針、プログラム、プロトコル(通信規程)等の知識集約部門が渾然一体化したもので、マン−マシン・インタフェース(人間-機械の連接)、例えば、表示スクリーンやキーボード、ねずみの形をしたマウスや音声認識装置やリモコンのボタン等の入/出力デバイス(装置)を介してユーザとの間で複雑多きな働きをします。
 
 この情報技術は単に情報をデジタル化(1と0の数値符号の組合せに変換する)して伝送し、および処理することにとどまらず、処理したデータを別のデータと照合、融合し、さらに付加価値を加えて、より効果的に適用するための手立て、即ち、手段なのです。  
 手段であるからには、何をすかの明確な目的、できれば未来ビジョンやグランドデザインの設定が国家、組織(企業を含む)および個人に求められているのです。

 また「デジタル革命」の時代といわれていますが、その意味は情報をデジタル化して(即ち、0と1に置き換え)膨大な量永久的に記憶し、それを所要に応じて引出し、随意に組合せ、迅速に伝送処理し、双方向的に(インタラクティブ)に作用することにより新しい手法やビジネスを立ち上げ、富を創造すると共に、在来組織、機構や体制、手順等をそれに即応できるように改革することを言います。
 そのためには組織を始め個人に至るまで発想の大転換が必要で、そしてその手段としてコンピュータやインターネットを利用するということであります。

「未来の衝撃」、「第三の波」および「パワー・シフト」の三部作で著名なアルビン・トフラーは20年前から21世紀は「知識情報集約経済社会」に移行すると論理的に洞察し予測してきました。彼の論説はピーター・ドラッカーやヘンリー・キッシンジャーなどの叡智をさらに飛躍させたもであります。

 今日の情報技術(IT)革命は、農業革命、産業革命に次ぐ、第三の革命と言われております。見方を替えれば明治維新の大改革、太平洋戦争の敗戦により全ての価値観がひっくり返り、日本占領軍最高司令官のマッカーサの農地開放、財閥解体に続く公職追放令により50歳以上の各組織のトップが引退して政・官および財界において40代が日本を背負うことになり焦土の中から今日の発展を成し遂げた昭和の大変革(いわば革命)に次ぐ、いやそれ以上の大きな変革に対面していることを認識して戴きたいと存じます。

2.導入    
 
・失われた10年

 バルブ崩壊以来10年間、新たな展望が開けず停滞が続き、この失われた10年を取り戻すには、早急に高速・大容量の骨幹通信ネットワーク(衛星通信および光ファイバー網)を整備すると共に、新しい国家・社会秩序を作りだし、将来の展望を開かなければ21世紀を迎え、激しい國際競争の中で生き伸びることができない状況にまで追い詰められているのです。この逼塞した状態を根本的に改革する手段、手立てが情報技術であり、デジタル革命なのです。

 失われた10年とは、1990年3月、NTTは世界に先駆けて2015年までに光ファイバーを家庭まで敷設する「ファイバー・ツー・ザ・ホーム」(新高度情報通信サービス:VI&Pの構想)を打上げましたた。また同年9月には次世代ATM(非対称転送モード)交換機を世界で始めて開発し、映像伝送に適したB・ISDN(広帯域総合デジタル通信網)サービスを1995年から開始すると発表しましたた。これがアメリカに大きな衝撃を与えたことは間違い有りません。それでアメリカでは1992年ゴア副大統領が急遽,これと瓜二つの「全米情報スーパ・ハイウエイ」構想を発表しましたが、AT&Tなどの大手電話会社の既得権擁護の大反対で挫折し、内容を変えて普及率の高い(90%)地域ケーブル・テレビの同軸回線を含めた構想にすり替え、現在その構築と接合を殆ど完了し、2010年を目標に全米光ファイバー網の構築を進めています。

 日本では1994年、政府は「高度情報通信社会推進本部」を設置し、同年、電気通信審議会は2010年までに全国の家庭に光ファイバーを張るように提言しました。このように、高度情報通信社会への移行の準備は早くから提言されてきたもので、今日昨今の問題ではありません。それが2000年になってやっと日の目を見る状況になりましたが、いわばIT革命の先陣を切ったのは日本であります。NTTは本年、目標達成年度を2005年に繰り上げ、国も同様の意思を表明しました。経済、金融の次ぎに残されたこの最後の牙城を守りぬくためにアメリカと闘うには相対的優位ではなく絶対的優位な武器を持たねば勝てないからです。

 肌でその現実を理解している企業は徹底的な組織構造の改革を行ない、余剰人員を整理する一方で、長年の商習慣の系列やグループの絆を無視した合併、連携、連合を断行し、また、長年お世話になった問屋を通さず直接消費者と取引を始め、また各種民間組織では社内の「地域・企業内通信網」(LAN),例えば、情報ビルの構築等により中間管理職を排してトップからワーキング・レベルへ直接指令を行なう等、ピラミッド型組織からフラットな組織への移行が急激に行なわれています。 
 リストラ、即ち、構造基盤の再構築の結果、大量の人員整理が行なわれ、適切な受皿がなく、また労働人口の移動の習慣もなく、且つ、スペッシャリテイ(専門技能)を持たない中年以上は未来に希望がもてず沈滞した空気が覆っているのが現状です。
 
 ひるがえって80年代から日本以上の規模で大々的にリストラを始めたアメリカでもレイオフされた労働者全員を吸収する受皿は有りませんでしたが、次の三つにより労働人口の再編成が行なわれてきました。

1. 官公庁や大企業の徹底的な情報公開のために膨大なホームページ作成、更新するための作業の一括外注(アウト・ソーシング)による雇用の増大。
2. スモール・オフィス・ホーム・オフィス(SOHO)による個人の新事業への参入。
3. ホワイト・カラーの管理職からピザの配達ボーイ等のサービス業への転職(暫定的に)、それらの人が逐次活況のIT関連産業に吸収されている。(全員キーボードの操作に熟練してい  るので)

・新しい息吹 

 日本でもここ数年来、インターネットを自由に使いこなしている若者たちの活躍が目立ちはじめました。例えば、

1. インターネットの検索エンジン(探し役のロボット)のYAHOO(ヤフー)JAPAN 1996年の設立
  以来、数年で急成長
. 仮想店舗(パソコン一台で成り立つ商売)の運用、 ホーム・コンビニエンスに端末装置を設置するネット銀行の開設、その他、ネットで注文した商品の配送中継点として注目。
  例:グラフィック・デザイン、アニメの動画、データの入力、ホームページ作成、海外向け中古車の販売等々。境港でも蟹や旬の魚を全国に発信し、注文を宅急便で発送している。
3. ボランティアの大動員、関西大地震(二百万人)やロシアのタンカーの重油流失事故(二十万人)、 個人の和の広がり、新しい連帯感の芽生え
4. 署名運動(核実験反対の世界規模の署名) 等々
5. 各種のアプリケーション・ソフト(応用プログラム)の無料提供、普及後に新バージョン(改修分)から有料化
6. イノベーター、クリエータ、ソリュータの輩出
  澁谷の一角の「ビット・バレイ」ではインターネットを道具として駆使し、従来の発想を破った若者達が明るい未来を目指して様々な活動を行ない、斬新なソフトウエアを開発し、続々と新しいビジネス(コストを無限にゼロに近づけるような)を立ち上げています。ここから今、世界最先端のソフトが続々と生まれているのです。これはベンチャー(冒険的事業、敢然と立ち向かうの意)に場所、資金、人材、経営コンサルタントなどを提供して助ける施設や機関(即ち、インキュベーション)の芽がでてきたことも合わせて表わしています。インキュベーター 。そして不況といわれている現在でも若い、ニュー・リッチ層が次第に増大し、首都東京の動きは次第にダイナミックになってきました。日本は決して悲観することはありません。

参考: 世界最大のアメリカの仮想書店、常時250万冊を品揃い、1995年開店、3年後に世界最大となる、アマゾン・ドット・コム 
     http://www.amazon.com 発送は2--3日。
    また朝日新聞デジタル版(無料) http://www.asahi.com一日のページ・ビュー250万回以上

・世界に誇る我が国の製造技術

 日本ではT産業(伝統的分野)の中で、自動車や電子工業分野、ロボットを含む精密工作機械、航空機のエンジンその他、特に、家電のハードウエアの製造技術とその緻密さ、品質の高さはなお世界一なのです。その中でも特筆に価するのは自動車のIT化や多機能ゲーム機器で、日本ならではの繊細、精緻な技術で開発を進め、世界のトップの座にあります。 
 また、液晶パネルの製造では世界の90%のシェアを保持し、またそれに不可欠なカラー・フィルターを大量生産しているのは世界でも凸版印刷と大日本印刷の二社しかありません。絶対的優位を確保しています。
    

3.本論:

・インターネット

 情報技術(IT)の集大成である一つの通信網で複数の媒体を同時に取り扱うマルチメディア(多重媒体)を論じる前にその基盤であるインターネットについて述べてみます。まずは自らインターネットに取り組み六年の経験を持つ作家の立花隆氏は次のように述べています。

 「インターネットは電子的情報の保管庫ではなく、それを介して沢山の人が情報空間上でいろいろな活動を展開する活動の場である」。「多くの人がネットの上で出会い、触れ合い経験を共有して意見をぶっつけ合い、情報や商品を売買し、交換し、またプロジェクトを立ち上げたり、組織をつくったり、あらゆる人間活動が物理空間にとらわれずにワールドワイドに同時進行的に展開されている不思議な巨大な空間で、毎日々々、恐るべき速度で巨大化しつつある情報の怪物ある」と。  
 そして、「インターネットに入り込んでみるとアメリカ社会の強さが情報を共有する社会の強みであることが分かる。日本では価値ある情報は殆ど官庁が握っていてそれを公開しないのである。社会のシステムを改善するには情報の社会的共有が不可欠である。日本の政府で本格的なホームページを開設しているのは首相官邸、宇宙事業団と郵政省など数える程しかない。そして宇宙事業団とてアメリカのNASAの1/1000程度である」と述べております。   
 
 世界の中で、全人口に占めるインターネット利用者の割合は、トップはアイスランドとスエーデンの46%、5位のアメリカが40%、10位のイギリスが23%、12位台湾の22%、13位の日本と韓国が共に21%ですが、日本では昨年以来、携帯電話の「I-モード」での利用者が爆発的に増大しつつあります。
 他方、アジアでの情報化の進展の度合いは目を見張るほどで、特に、韓国(サイバー・コリア21)とシンガポール(シンガポール・ワンを中核とするIT2000計画)マレーシアも「マルチメディア・スーパー・コリドーMSC」の進展は急ピッチで、オンライン・ショッピング、通信教育、遠隔医療、電子会議を始め、小学校におけるパソコン教育も年々充実しています。を策定し、昨年その中核都市であるサイバージャヤが完成し、マルチメディア大学も開設されました。
 
・マルチメディア

 マルチメディアを駆使する高度情報社会とは、「各家庭まで光ファイバーが張りめぐらされ、それに電話、ファクシミル、パソコン、コンピュータ付きテレビ、家電中枢統制機器が接続され、だれもが電子メールをやり取りし、ネット上で新聞を読み、ネットに意見を発表して未知の多数の人々との話題を楽しみ、さらには買物はカストマイズ(顧客特注)した自分だけの製品を入手し、、店舗なしでネット上で販売を行ない、銀行預金、支払をネットで行ない、役所への手続は電子窓口を利用し、株の投資、旅行計画、旅館の予約、未知の人との囲碁・将棋・トランプ・ゲーム、恋人探し、有名大学の名物教授の授業聴講、また、家庭からのリクエストで送られてくるビデオ・ゲームを楽しみ、世界中の映画も好きな時に見られるようになる社会であります。そして、住宅家屋の保安、防火、温度や燈火の管理、燃料の調整、留守間の電話や訪問者の記録・対応など、日常生活が安全、確実、迅速、効率的に行なわれ、ネット上での未知の出会いを楽しみ、充実した人生を送ることができるようになります。

・新しい社会 

具体的にどのような社会、生活様式になるのか、そしてその特徴と問題点(明暗、光と陰)につて述べてみます。

1. 官公庁、大企業の徹底的な情報公開(開示)
  欧米では殆どの政府公刊物の全文がインターネットで読めるのに対して、日本では経済白書など簡単な概要のみで、全貌を読むには従   来通り印刷発行物を読むしかあいません。本格的に情報公開するためにはホームページに収録する膨大な情報データの作成と更新の   ためには多くの作業と経費が必要で、そのアウトソーシング(外部委託発注)により新たな雇用を創造する面もあります。

  大切なことは国民が情報を共有することにあり、それが公正且つ透明な自由競争を活性化させ、経済の発展につながります。また、自由経済の競争原理は申すまでもなく諸規制の緩和や撤廃が前提であります。
2.E-メールがビジネスマンの基本的通信手段となります。
  國際会議や商談の議事・内容はノート・パソコンで収録し、直ちにE-メールで報告する。
2. 商品の広告やカタログはCD-ROM(コンパクト・ディスク読取り専用メモリ)で郵送され、子供
 達も嵩張った百科辞典を持ち出さずに分野別のCD-ROMをクリックするだけでたちまち必要な資料が得られます。
3. 流通機構における系列の崩壊、価格や品質重視で取引先を選定する電子ケイレツと呼ばれる新たな方式による競争の透明化と活     性化など目に見えない面を含めて大きな変革の嵐  に見舞われます。
4. 家庭用テレビ・ゲームは今や単なる子供のオモチャから完全に脱皮し、一大メディアに成長] しました。対話型マルチプレヤーの「リアル」  、「トライ」を始め「セガサターン」、「プレイステーシ ョン2」等々、その圧倒的な処理能力はワークステーション並で、リアルな動画表示や   デジタル 画像、音声処理能力を備え、ゲーム以外にも趣味、教育、電子出版など幅広いソフトが楽しめ る。通信機能も標準装備され、  CATVに接続してCATV局との情報交換も可能でです。これを  家庭のマルチメディアの中枢端末機器にしようという意図もあります。
5. 続々と登場する多機能型テレビ・ゲームの競争において、ソフトを制するもにが次世代機を制すると言われています。
6. 日本独自の携帯電話インターネット機能の「I-モード」のさらなる改修・改善が進むでしょう。そして日常生活のあらゆる分野で便利さと快   適さ、そしてコストの引下げが生じます。
7. 教育については横並びから個性を伸ばす教育、丸暗記のパターン学習から考える力をつけ
  、特異な発想、着想を異端視しない学校環境の整備が不可欠であります、このことは情報   技術の進展・開発において、只ただニーズ  を追うのでなく、シーズを求める発明、特に、ソフトウエアの開発につながるものであります。さらには、インターネットの公用語の英語教育  の充実が望まれます。(IT大国スエーデンの英語教育重視は参考になります)
8. 通信と放送の融合により、番組の大幅な見直しがなされ、低級、愚劣な番組が淘汰されるよ
  うになります。
9. 遠隔医療(テレ・メディシン)は軍事のみでなく僻地医療にもの実用化されるようになります。
10 電子商取引(e-コマース)がが拡充し、普遍化することになります。
11 完な顧客主導型ビジネス(情報の流れが逆流)が主流となり、放送および広告業界に大きな
   変革が訪れるでしょう。
12.入力デバイスとしてキーボードを用いない斬新なボタン操作や、声による音声認識技術の
  実用化が進み、キーボードを操作できないためのデジタル・デバイド(デジタル格差)が緩和されるでしょう。しかし、地域、年齢、貧困等に  よるデジタル・デバイドは依然として残り、デジタ  ル弱者に対する対応が必要となります。
13. オープン・ソース・ムーブメント(一般公開進展)が隆盛となります。これはフィンランドの学生 がパソコン用に開発したUNIX互換機のオ   ペレーティング・システム(OS)(基本プログラムの  こと )のLinuxをすべてインターネット上で公開し、世界中の研究者やコンピュータ・    マニアがアクセスしてきて修正、改良していったのです。即ち、世界中の多数の人の手で共同開発されたもの で、当然、新化のスピード   は極めて速く、高い完成度になっています。現在の一人  勝ちのウインドウの牙城を脅かすことになります。マイクロソフト社は前に築    き上げた実績が大きければ大きいほど大胆な変革に対応できなくなっており、今その対応に追われています  。 
 
 これらについて興味ある事項を選んでお話します。例えば、顧客主導型ビジネスとして、ご婦人がインターネットで洋服を買う場合のバーチャル・リアルテイ(仮想現実)のモデルに着せて、様々の角度から評価し、色や仕立ての細部まで自分だけのものを誂えることができるなど。さらには婦人の化粧品について、オイリー・スキン用の油脂分を減らしたスキン・ケアの成分配合を変えた同じブランドもの特注文したりまた、カーナビ、即ち、自動車に搭載した全世界測位システムGPS)に各種の付加価値を加え、右脳を用いた「感性検索システム」による希望音楽の配信や、始めての街で好みの買物や観光の案内等の痒いところに手が届くサービスが普遍化するなど。そして経済は少数品目大量販売から大量品種少数販売に移行し、宣伝広告は大衆から個人へ指向されるようになります。即ち、個の確立と尊重の時代になります。


3.将来の展望:
  
 情報技術を道具として駆使する知識情報集約経済社会は
・ 個人の創造力、構想力が前面に浮き出て、クリエータイノベータ(グラフィック・デザイナー、
  イラストレータ、ソリューター等)の時代を招来する(感性や直感力が本当のパワーを持つ時代 に なります。
・ 家庭における娯楽はエンターテイメントからアミューズメントへ変貌します。
 そのため、魅力ある番組(コンテンツ)を製作する産業の成長が不可欠です。
情報技術はハードからソフトへ、そしてアート(グラフィックや音楽)へと進展します。
・ 端末機器としてのアミューズメントの極致といわれるデジタルテレビ、大容量のハードディスク を搭載した多機能次世代パソコン・テレビ、 そしてインターネットを含め多機能を備えたプレイゲ ーム機器のどれが事務所や家庭における情報中枢機器になるのか。主導権争いは  苛烈で、 このような競争原理の結果、より良き物がより安くく供給されることにもなります。
 
 また通信回線も従来の電話線(二本の導線)を利用した総合デジタル・サービス通信網(ISDN)、非対称デジタル加入者線(ADSL)、ケーブル・テレビの同軸ケーブル、光ファイバーや衛星利用の無線方式などが競合し、設備費、通信容量、伝送速度そして料金の易さで競い合い、ユーザは多くの選択技の中で使用目的に照らして自由に選ぶことができます。

 注:ADSLとは既存の電話線に専用機器を取付けるだけでISDNの10倍以上の高速デジタル通信(640kbps)が可能になります。現在、大都市優先で接続が行なわれています。、参考までに、CATVの通信速度はISDNの2倍です。また光信号を伝送するガラスまたはプラスチック素材とする細い線の光ファイバーの通信速度は10メガ・ビット/秒でISDNの150倍の速さで、前出の無線インターネットの情報量は光ファイバーなみです(但し、利用料金が高い)。光ファイバーの将来性への期待は大きいですが、実際にどのように利用、適用するかについて国家としての基本戦略が必要です。 

4.保全、防護措置:
 
 情報インフラ、特に、コンピュータや同ネットワークに電子的に侵入して情報を盗み、破壊、改竄、あるいはシステムに混乱を起こさせる手段として「ハッカー」と「コンピュータ・ウイルス」があります。
 ハッカー(即ちコンピュータ・マニア、転じてコンピュータやネットワークに不正侵入して違法行為を行なう者を意味する)はリアル・タイムの活動が基本です。これに対してコンピュータ・ウイルス(トリガー悪意を持ったプログラム、または自律型不正プログラムと呼ばれることもある)は、ある条件下で動作するとか、外部からの(引金)により勝手に動きまわる性質があり、時間をおいてから特定の行為を行なう場合が多い。
 ハッカーに侵入される状態はウイルスにも侵入される(感染する)可能性があり、例えば、インターネットから情報を収集しようとした時に、あたかもインターネットからの情報であるかのよう
に装って入り込むやりかたもあります。あるいは、対象とするコンピュータに意図的に間違えた電子メールを反復して送りつけ、相手側から間違っている旨のメッセージがあると、それを手がかりとして侵入する手口を得る方法もあり、その方法はさまざまでです。

 ウイルス被害の増大により日本でもウイルス対策、特に、「コンピュータ・ワクチン」「コンピュータ・ウイスス抗体性ソフトウエア」 への関心が高まってきました。アメリカではすでに感染してからワクチンを投与(プログラムによる自浄作業)するのでなく、感染前に予防接種の働きをするの開発に着手しています。
 このほか、暗号化、秘密鍵方式やシステム自体の不正侵入防止機能としてのファイヤー・ウオール(防火壁の意)、ゲート・ウエイ(関門)の設定等、各種の防護措置が講じられています。
 また、デマ・メールの防護手段、匿名を利用した個人攻撃の防護e-コマース詐欺、ネット犯罪防止対策等々、情報技術の陰にあたる部分の対応が今後の大きな課題になっています。
 
 北欧の小国、スエーデンは情報技術大国で、特に、これらの防護用ソフトウエアでは世界に名を高めております。同国の携帯電話の占有率は75%(日本は48%)にも達し、自動販売機から商品の取りだしを含め、多様な用途に用いられています。

 最後に、一国の中枢機能の混乱と破壊を狙ったネット侵入をどのように受け取るのか、それはテロなのか、戦争なのか、新しい倫理観、社会規範について國際的な統一見解が必要となりましょう。

通産省は1996年に「コンピュータ不正アクセス対策基準」を公示し、翌年には「パソコン・ユーザのためのウイルス対策、七ケ条」を発表し、警察庁も1997年「情報システム安全対策指針」を公示した。パス・ワードの定期的変更、ファイルの暗号化、新種のウイルスへの警戒を喚起しております。。

10.終りに当たり:

 NTTや富士通総合研究所を始め、日本のハードウエアの開発および製造技術は素晴らしいものがあり、加えて職人的な匠の技もまだまだ温存されています。さらに、家庭用ゲーム機器のソニーのプレイステーション2のパソコンとは比較にならない128ビットの情報処理能力を持つハードウエアと斬新奇抜な発想に基づくストーリのコンテンツ(情報内容)を持つソフトウエアの卓越した総合技術力はアメリカも度肝を抜かれた感じで、先般来日したペンタゴンの調査チームも詳細な調査を行なっています。

 この情報技術(IT)革命時代を迎え、日本はアメリカとは一味違う虚業ではない実業の製造業を基盤とした日本独自の型のIT社会を構築しなければなりません。
 アメリカ一辺倒で、何から何までアメリカのもの真似をする必要はありません。日本は高い標準レベルの学力と勤勉な性格を持つ多数の国民を擁し、さらには高い貯蓄率を誇っております。 
 自信を持ってこの時代を乗り越え、新しい秩序を築きあげようではありませんか。   
 

 皆様、一度、インターネットの中に入り込み、世界のホームページをブラウズ(閲覧)し「ネットサーフィン」してみませんか、聞くと見るとでは大違いで、目から鱗が落ちますよ。古い諺にの言います「畳みの上の水練は役にたたず」と.。


 本日の講演内容にあきたらないお方は、添付図面「松下 薫のホームページ」論説第4号「情報技術(IT)の展望」の本格的な論述にお目をお通下さい。

   御意見や御質問は次ぎのE-メール・アドレスにどうぞ。  
        m2021@mocha.ocn.ne.jp            


「参考図書」

 1.情報テロ 江畑謙介  日経BP社
 2.インターネット探検 立花」隆  講談社
 3.デジタル産業革命  山根一真  講談社
 4.第三の開国(インターネットの衝撃) 神沼ニ真 紀伊国屋書店
 5.予兆(情報世紀を開く)大川 功  東洋経済新報社
 6.マルチメディアを読む辞書(日経ビジネス編) 日経BP版
 7.OSI&ISDN (絵解き用語辞典) オーム社
 8.オール図解インターネットで使う言葉が超簡単にわかる本  条井孝雄 KKベストセラーズ
 9.最新オンライン情報活用法 日本データベース協会
10..感性IT革命 小池 聡行  創作舎
 その他、世界のデータベースから。

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