ッセイ・コラム No.8

静かな雰囲気でリカーを楽しむ



 外国映画などでよく見られる場面であるが、客も少なく、静かに好みのボトル(モルト、ワインやカクテルにお酒を含め)を楽しめる場所を探していた。
 
 東京などでは「文士の隠れ家」、「紳士の憩いの場所」、あるいは「女が一人で安心して寛げる場」などと呼ばれ、高級感があり、渋い感じの年季の入ったバーテンダーがその時々の気分にあった飲み物を薦めてくれるいわゆ「ショット・バー」が少なくないが、人口の少ない地方都市では採算がとれないためか殆ど見当たらない。
 
 私は物書きのはしくれとして、原稿の閉め切り作業に追われ、やっと書き上げて発送した日などは、夕刻、一人静かに飲んで疲れた脳を癒したい想いが強い。美人ホステスや喧騒なカラオケなどは全く無用で、そんな場所を最近やっと見つけることができた。
 
 聞けばその店のオーナーは中々凝り性の人物らしく、長年かけて実に豊富なビンテージを集め、ラベルの数も圧倒される程のものがある。カウンターは八人程で一杯になるが、椅子はストールでなく籐編みのゆったりした椅子で、カウンターの高さもそれに合わせている。静かに流れるバックグランド・ミュージックの選曲も気がきいている。ソファーの別席も設けられている。JR松江駅から徒歩8分程という地の利も良い。
 
 通常、この種の店の常連は客が立て込むのを嫌って知人にも知らせないのが普通であるが、経営者の立場なら痛し痒しでもあろう。私としては是非共長く続けてもらいたいので、多くの知友の中から少数の紳士を選ばせてもらってさそってみようと思う。気に入ればあとは一人で行けばよいのだから。
                           
 


            

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